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 札幌音楽家協議会は札幌をはじめ道内に在住する音楽家たちが、開かれた民主的な音楽活動を目指して、音楽文化の発展と会員相互の連携と親睦をはかる目的で作られた、60年の歴史を有する公的な団体です。
 コンサート・コンコルデやコンチェルト・ダ・サローネ等の主催事業、例会や親睦会を通じて音楽家同士のコミュニケーションとレベルの向上を計り、北海道の音楽文化の発展に寄与することを目的としています。

ホームページ開設 2007/6/21
リニューアル 2011/5/20
最終更新  2024/1/29

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 今月のコラム −・−・−・−

 第2代会長であった工藤氏が機関誌第2号に寄せた文章です。60年も経っているのに、状況はあまり変わっていない気がします・・・

一つの反省
工藤健次   

「音楽は軍需品なり」と称して文化としての音楽が圧殺された悪しき時代があった。終戦後20年を経て日本の文化もようやく立ち直った観があり、特に音楽における若い層の進出活躍には注目すべきところが多く、各種文化団体の誕生も雨後の筍の状を呈していることは誠に結構と言わざるを得ないが、極く身近かな周囲を見渡しても……若い青年の苦しみ……彼等がその才能と技術とを発展させ、芸術の内面をほり下げてゆこうとする道が残念ながら解放されているとは言い切れない。音楽家としての生活の保障がされず、内職やアルバイトに追われ又は既成勢力が門戸を閉じている場合もあったようである。
このような社会は沈滞と腐敗を生み、志を得ることができない社会には明るい末来もないだろう。
斯かる見方は現在の音楽に対してあまりにも暗く、悲観的であると言うかも知れない。も っと明るい面も多いのだと言うだろう。然し、発展への契機は否定的な面におぃて強く打ち出され、この暗さの中にこそ問題の本質があるように考えられる。
このような悪い面は勿論根本的な意味では日本の政治の文化的貪困さにも責任があり、国民共有の島国根性もわざわいしているとも言えるが、私自身、一つの反省として考えて見たい。
先ず何よりも不幸と言えることは、不平不満に対して音楽の自主的立場から発言する者が極めて少い (私自身を含めて)ということがある。発言する為には勇気を必要とし、又発言によつて得られる効果は無意味で終るかも知れない。不可能としてあきらめる私のようななまけ者も居るだろう。人間同志の集まりでは仲々人形をあつかうようにはゆかないが、音楽家が自主的立場から大きくまとまること、音楽を愛するという一点において互に協力し心のつながりを持つこと、このことが音楽文化の当面するあらゆる問題を解決するいとぐちとなり、難局はこヽから開かれてくる筈である。勿論これまでにも既存の思い思いの団体や自立のサークルは在ったが、ただ生き生きと活動していないだけの話であろう。
札幌音楽家協議会の今後の在り方について、私自身末だ具体的に明言し得るような卓言を持たないが、広汎に汎る音楽家同志が相集い、民主的な組織の力によって各種の演奏会に参加し、進んで研究会を開き、機関誌を通して互に所信を発表する、このことだけでも本道の音楽は一歩前進し、会員も活激化せざるを得ない。いや、むしろ会員こそ一人々々が先頭に立たねばならないという意識の方が先であろう。昨年の会長辞退の辨に関連するが、 100名の会員が廻り持ちでもよい。一度は会長或いは委員を経験され、最も身近かなものとして会について考える。そのような性格の協議会であってほしいと念願する。
以下、ピアニスト・ コルトーの音楽学校におけるレッスンにおいて述べられた講義のノー トを引用し、自己反省の資と致し、併せて比の稿を終えさせて頂く。
「我々は音楽によって人間を知ることができる。人間が信仰するとは如何なる心の現象であるか。人間の最もひそかな心、最も心の許せる親しきものを音楽によって語り合い、お互に引出し合うことが出来るのではないか? 我々は聴者の想像力や思出の扉を開けて、人間性の聖なる本然の姿にすることができるのではないか。我々の仕事はこのような感覚、心持を引出し、汲みとることができるように養成するのである。美しい感覚を他人の心を通じて伝播し得るように我等のアンテナを充分発達させることである。没交捗、無関係な美でなく、役に立つ親切な、慈悲深い、好意ある美を伝えなければならぬ。此のお互の間に聖い炎を点ずる交捗こそ音楽家の使命である。
我々の日常生活にはもはや熱情、感動を起させる何物もないし、一人の男子の心をゆり動かすエモーシヨンもない。諸君がこのような我々の地位を考える時は、至上最高の素晴らしい、あらゆる犠性献身に値し、演夷家であると教授者であるとを問わず、各自の才能を提供するよう決心するであらう。我々は人生の之等の驚くべき現象に対して絶間のない貢献をし、人間社会をより良くし、人間性を高揚するようにせねばならぬ。」